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この成果が現れ、その後は平穏な日々が続いて関係者一同胸をなでおろしている。
これを教訓に、昨年の予防広報は防災行政無線によるほか、市広報紙に毎月掲載するとともに、さらに各家庭に防火チラシ等の配布を行い、防火思想の普及に努めた。
その甲斐あってか、火災発生件数も減少し、損害額も大幅減となり、広報活動の効果が現れている。今後ともに広報活動に力を注ぎ市民の安寧の維持に努めて行きたい。
三 海水浴客を対象に津波防災訓練
当市の津波防災訓練は、チリ地震津波以後毎年五月に市内全域で行っているが、昨年の阪神・淡路大震災を教訓に内容も更に充実したものとなっている。
また、前述のとおり「高田松原」という名所があり、浜辺には石川啄木等の歌碑が人々の心を和ませ、海水浴シーズンになると、一日平均・二三、○○○人・一カ月で六九〇、○○○人の人であふれる。
この海水浴客を津波から守るため、毎年七月下旬に海水浴客を対象とした津波避難訓練を行っている。
《平成七年度の訓練内容》
訓練実施日 平成七年七月二七日(木)
実施時刻 午前一〇時三〇分
訓練終了 午前一一時○○分
天気 快晴、気温 三一度、湿度 五七%
東南東の風 三m
参加機関 陸前高田市、消防本部、消防署、消防団、警察、交通指導隊、防犯協会、水上・陸上監視員
なお、海水浴客、観光客は訓練について知らされていない。
○想定内容
「訓練、午前一〇時三〇分、三陸はるか沖を震源とする震度五の地震が発生、津波警報が発表された。」
○活動内容
午前一〇時三一分、防災行政無線による放送と同時に、本部指揮者、ポンプ車二台が出動し午前一〇時三五分現場到着、直ちに避難誘導を開始し、午前一〇時三九分、後続消防団車両六台現場到着、防潮堤の水門を閉鎖するとともに避難誘導を開始する。

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○現場活動
観光案内所の放送による避難命令、署員、団員による携帯拡声器での避難誘導。
海上監視船と陸上監視員との連携による避難誘導。
○活動結果及び課題
海水浴客、観光客等の参加協力者は、平日にもかかわらず八、二七三名であった。休日になると数倍に膨れ上がるため、避難誘導員の増員、放送スピーカーの増設が急務。
避難誘導は、防潮堤の背後までを第一目標としたので車の使用はなかったが、警報、大津波警報が発表された場合、過去の三陸大津波(明治二九年、昭和八年)の潮位を考えると、街の高台までは距離があるため、車の使用が考えられ、交通障害の問題が悩みである。
また、海水浴客、観光客は不平不満を言わずにいつでも快く協力してくれ、これも、回数を重ねた成果であると認識したい。
海水浴客は水着姿のまま避難協力してくれるため砂浜には手荷物等が残るので、防犯には今後とも関係者の最大限の注意が必要である。
四 おわりに
当市は少ない職員のため、何かと職員に負担が掛かってきますが、当分増員が難しいので、より一層、市民、消防団、防火クラブと一体となって消防防災活動を積極的に推進していきたいと考えている。
(菅野春夫)

 

 

 

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